看護師にも求められる理由
看護師だからこそ求められる
「看護師にビジネスマナーは必要ない」と考えている人もいるかもしれません。しかし、現場で活躍する看護師や一旦現場から距離をおいた看護師の多くは「看護師にこそビジネスマナーが必要」と考えています。しかし、残念ながらいまだにビジネスマナーを軽視している現場も少なくありません。ビジネスマナーが軽視されるようになった経緯や、看護師にこそ求められる理由を見ていきましょう。
軽視されるようになった経緯
日本は先進国の中でも急速に高齢化が進んでいます。高齢者が多いということはつまり、それだけ栄養状態や衛生環境がよく、国が豊かである証拠です。医療体制も充実していますが、その一方で寝たきりの状態で過ごす高齢者が増えました。家族の形も時代と共に変化していき、核家族世帯や高齢者のみの単身世帯が増え、女性の社会進出が進んだことから家庭内で看病することが難しくなりました。その結果、病気の影響で自立できない高齢者は病院で長い期間過ごすことになったのです。病院は常に満床状態となり、経営自体は安定します。税収入が絡む病院の経営はお金の流れが見えにくいこともあり、徐々に顧客という概念が薄れ、医療側の都合でサービスが提供されるようになっていきました。
病院のお世話になる人は基本的に弱っています。そのため、無意識のうちに命令口調が蔓延し、看護の内容も流れ作業のようになっていきます。中には、「治療のため」と銘打ち身体拘束や隔離などの対応を頻繁に行うケースも増えました。患者側としても、「治療内容に文句を付けたら退院させられるかもしれない」という恐怖があり、口に出せません。このように、ビジネスマナーがなっていなくても誰も指摘できない状況になってしまったのです。
看護師はサービス業
サービス業の定義とは「形のないものに価値を与え、提供し、報酬を得ること」です。物を直接販売する小売業などとは違い、看護師の仕事はサービス業の範囲に含まれます。そして、サービスを提供する相手は「お客様」です。お客様に喜んでもらうためには指示されたことをただやるのではなく、先手を打って行動しなければなりません。それが結果としてお客様の満足度につながります。
また、医療はホテルなどとは違い、相手の心や身体に直接触れて悩みや不安を解消するサービスです。食事介助などの簡単そうに見える業務でも、一歩間違えれば命を落とす危険性があります。患者側も喜んで排せつ介助や入浴介助を受けているわけではありません。本来、他人に排せつを見られたり、目の前で裸になりたい人などいないはずです。当然、検査や治療にも痛みが伴います。すべての患者は悩みや不安を抱えており、それを我慢している状況です。「本来なら受けたくないサービス」といい換えてもいいでしょう。
このように、相手の状況が基本的にネガティブな点が他のサービス業とは大きく異なる部分です。それゆえ、看護師こそビジネスマナーを重視し、患者の心を支えていかなければならないのです。